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低コスト版のPAC-3 弾道ミサイル迎撃能力を13回実証

 ロッキード・マーティンは2019年11月7日(現地時間)、ペトリオットPAC-3ミサイルの低コスト版であるコスト・リダクション・イニシアチブ(CRI)の実射試験を行い、弾道ミサイルの迎撃に成功したと発表。通常版と遜色ない能力を実証しました。

  •  弾道ミサイル迎撃を目的としたペトリオットPAC-3は、高性能であることは証明済みですが、1発当たりの単価が高いのが難点。このため、数を揃えるのが難しく、一度に多くの弾道ミサイルが飛来した場合、ミサイルの数が足りずに「撃ちもらし」が出るリスクが指摘されてきました。

     陸上での迎撃ミサイルを所管するアメリカ陸軍は、PAC-3のメーカーであるロッキード・マーティンとコストを抑えた廉価版の開発を開始。ここ7年にわたって実施試験プログラム(FSP)を進めてきました。

     大事なのは、コストを抑えても迎撃能力に影響しないこと。今回ニューメキシコ州のアメリカ陸軍ホワイトサンズ射場で実施した試験で、12回目と13回目の迎撃成功となり、廉価になっても能力は変わらないことを証明したのです。

     ロッキード・マーティンでPAC-3担当副社長を務める、ジェイ・ピットマン氏は「PAC-3は長い信頼の歴史を持つ、世界で唯一の実戦経験に裏打ちされた迎撃ミサイルです。現在の安全保障環境においては、信頼できる製品が求められます。PAC-3はこれからも、多重に統合された防衛システムの中で重要なパートを担い続けると信じています」と語っています。

     PAC-3はアメリカのほか、日本や台湾、韓国といった東アジア、ドイツなどのNATO諸国、クウェートやカタール、サウジアラビア、UAEといった中東諸国など14か国に、アメリカからの有償軍事供与(FMS)の形で導入されています。今回の試験では、試験を主導するアメリカ陸軍だけでなく、現在のPAC-3導入国や導入を検討している国からも視察団が訪れ、実験を見守っていました。

     性能向上版のPAC-3 MSEと合わせ、廉価版のPAC-3 CRIもアメリカで実戦化されれば、今後FMSで日本などに導入の提案がなされるものと思われます。

    <出典・引用>
    ロッキード・マーティン プレスリリース
    Image:Lockheed Martin/U.S.Army/USAF

    (咲村珠樹)

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