「特撮映像館」27回目は昭和シリーズの人気怪獣の復活で話題となった「ゴジラVSキングギドラ」の登場。ついにこのタイトルが実現しました!

前作から2年を隔てて再び制作されたゴジラ作品は、ここで「VSシリーズ」として再スタートを切ることになった。同時に正月映画の定番として公開されることになる。


この作品で注目したいのは、ゴジラ誕生に迫っているところである。ティラノサウルス型の新種の恐竜「ゴジラサウルス」が、ビキニ環礁の核実験の放射能によってゴジラになった、というのが本作で示されたものである。

さらに、昭和シリーズの人気悪役怪獣キングギドラとの対決、昭和シリーズにも出演し、ゴジラ作品とは縁の深い土屋嘉男が今回も重要な役どころとして出演していることなど、ゴジラ作品のファンを意識したと思われるキャスティングがみごとろでもある。

全体としてはよくできた作品で、「VSシリーズ」の筆頭に挙げたいのであるが、改めて観てみると、細かいところで首をかしげざるを得ない矛盾もある。
未来からタイムマシンでやって来た未来人が、テレポートマシンを使い、ゴジラサウルスを移送し、ゴジラの誕生を阻止するのだが、彼らの企みによってキングギドラが誕生し、日本を襲う…ここまではいいとしよう。

ゴジラが誕生しなかったということになれば、普通はゴジラの代わりに54年にはキングギドラによって東京が破壊されたのでは…と考えると思う。少なくともゴジラという存在の記憶は消えてしまうだろう、と。この作品では、91年時点でゴジラが消滅し、キングギドラが現れるという設定になっている。それでいて、未来人がなぜそんなことを企んだのかといえば、日本がますます経済大国になって世界の覇権を握っていたからだということなのだが、テレポートされたベーリング海でやはりゴジラは誕生してしまい、改めて日本が破壊されると、未来では日本が弱小国に変わってしまっているという…考証上の統一がどうもあやふやなような…ストーリー進行上のご都合主義のような…そんなところもみられる。
一度はゴジラに倒されたキングギドラを未来の科学力でサイボーグ化して再びゴジラに挑ませるという展開は確かに面白かったのだけれども…。

前作では同時期に公開された『バットマン』をセリフに使っていたが、今回は『ターミネーター』ばりのアンドロイドM11が登場する。

監督/大森一樹、特技監督/川北紘一
キャスト/中川安奈、豊原功補、小高恵美、チャック・ウィルソン、ロバート・スコットフィールド、土屋嘉男、西岡徳馬、ほか。
1991年/日本/103分

(文:猫目ユウ)