毎度「その他1%」的話題をお届けしております「無所可用、安所困苦哉」でございます。鉄道ネタを続けておりましたが、一呼吸いれさせていただいて、今回はカエルのおはなしをおとどけします。


【関連:「アメフクラガエル」に関する記事】

 

カエルについては以前、「アメフクラガエル」という、なんとも不思議な姿のカエルについておとどけしました。今回は色彩豊かなカエルの中でも、「宝石」とも称される、ヤドクガエルについてのお話です。

我が家には現在、3種類のヤドクガエルがいます。
一種目は王道的カエル、コバルトヤドクガルことDendrobates azureus。美しい真っ青な体は、一度見たら忘れられないインパクトを持っております。

コバルトヤドクガエル
【写真:コバルトヤドクガエル】

二種目は、アイゾメヤドクガエル“ブラジル”、Dendrobates tinctorius ‘Brasiliaan’ 。アイゾメヤドクガエルは地域ごとに多様な色彩があり、地域名を付けて呼ばれます。色は多様ですが体つきはほぼ同じです。ヤドクガエルの中では大きくなります。

アイゾメヤドクガエル
【写真:アイゾメヤドクガエル“ブラジル”】

三種目は、ミイロヤドクガエルこと、Epipedobates tricolor。ちなみにミイロヤドクガエルについては、和名、学名とも別のものであるとする説もあり、議論されています。似たような姿をしたカエルが他にもあり、単なる地域個体群なのか、別種なのか、ワクワクです。

ミイロヤドクガエル
【写真:ミイロヤドクガエル】

このミイロヤドクガエルですが、我が家で産卵し、オタマジャクシから子ガエルになり、現在も成長しています。20匹ほどがカエルになり、一部は里子に出しました。写真の奥にいるのが親、手前にいるのが子です。

さて、これらのカエルの飼育についてお話しましょう。

 

--毒あるの?
ヤドクガエルという名は、現地生息地の住民が吹き矢などの矢に毒として使ったことに由来します。その名もモウドクフキヤガエルと言う名のカエルは、生物の中で最強の毒を持っていると言われています。
では、うちのヤドクガエルにはどの程度毒があるのか?
実は、カエルだけでなくイモリ、サンショウウウオ等の両生類全般が何らかの毒を持っていると考えられています。日本に住んでいるカエルでも、強弱の差はありますが毒が確認されている種もいます。
ヤドクガエルに限って言えば、毒の由来はエサにしているアリから来ていると言われています。うちにいるカエルはどれも繁殖個体で、エサはショウジョウバエかコオロギです。そのため、毒はあってもわずかしかないと考えられます。但し、念のため直接手で触らないようにしています。また両生類は体温が非常に低い動物でもあり、人の手の温度は高温すぎるので、カエルの健康面からも触らないほうが良いのです。

 

--エサは?
前述の通り、アリを主食にしているようです。ということは、とても小さなエサが必要です。小さなアリを確保するのはそう簡単なことではありません。そのため、飼育しやすい、飛べなくしたショジョウバエか、卵から孵化したばかりのコオロギを与えます。
ミイロヤドクガエルは、日本の多くのカエルのようにエサに対してパクっといきますが、コバルトとアイゾメは細い舌を伸ばしてエサを捕ります。カエルの大きさはミイロのほうが全然小さいのですが、むしろ大きなエサを食べられます。コバルトとアイゾメには、生まれたばかりのコオロギを与えています。
多くのカエルに共通したなかなか厄介なこととして、「動くものしかエサとして認識しない」ということがあります。カエルを飼うということは、同時にエサを飼うということでもあるのです。

小さなコオロギ
【写真:小さなコオロギ】

 

--飼育は難しい?
ミイロヤドクガエルは、温度と通気に注意すれば、カエルとしては優しい方だと思います。コバルトとアイゾメは、やや難易度が上がります。
ヤドクガエルは、土と水を入れ、植物を植えたビバリウムで飼育します。ヤドクガエルの専門書には、彼らの故郷の風景が取り上げられているものもあります。これらを参考にしつつ、ヤドクガエルの生息地を想像しながら、水場を用意し植物を植えます。植物が順調に育つ環境をととのえば大丈夫です。カエルを飼うには環境を飼え、と言われます。この感覚を大事にしてください。

飼育環境
【写真:飼育環境】

カエルは高温に弱いです。ヤドクガエルというと熱帯というイメージですが、熱帯ではあっても灼熱の砂漠に住んでいるわけではなく、たいていは森の中の流れのある川沿い・水辺に住んでおり、それほど気温は上がらないのです。日本の夏の気温にはまず耐えられません。夏場はカエルのためのエアコンは必須です。
要注意なのは季節の変わり目です。突発的に暑い日があるためです。30度になってしまったらオーバーヒートで死んでしまうでしょう。そのため、気温が高くなりそうな場合には、念のためエアコンをかけておくという対策が必要です。

あとはエサの確保です。ショウジョウバエを使う場合は、種親用のハエを買ってきて、試験管やプラボトルを使って繁殖させます。程よく小さいのでよく食べます。コオロギの場合は自家繁殖はちょっと難しく、専門店で購入することになります。カエル2匹程度で、一週間で200匹くらいは必要です。これはコオロギも生きていますので死ぬ場合があること、やや多めに与えておかないと食べ損なうこと等から、余裕を持った数を確保しておく必要があるためです。コオロギの場合にちょっと厄介なのは、「だんだん大きくなること」です。たくさん買ってきておくと、生まれたてサイズが2週間もすると倍くらいの大きさになってしまいますので、マメな調達が必要です。この点、体はコバルトの半分以下の小ささのくせにちょっと大きなエサでもバクッと食べてしまうミイロは飼育しやすいと言えます。また、今はコオロギの通販もあるので、以前ほどエサの確保に気を使わなくなっています。
もう一点、「エサは3日くらい空けても大丈夫」という点があります。哺乳類だとこうは行きません。例えば犬・猫なら毎日エサが必要ですが、カエルを始めとする両生類は代謝が遅いため、エサ間隔がちょっと開いても大丈夫です。ただしエサ間隔を開けるのが常態だとさすがに痩せてしまうので、旅行や出張などの急場しのぎは可能と考え、エサはマメにあげましょう。

 

--鳴き声とオスメス
カエルですからオスは鳴きます。コバルトの声は聞いたことはありませんが、あまり大きな声ではないそうです。ミイロは体に似合わぬ大きな声を出し、かつきれいです。閉めきった部屋の向こうで鳴いているのがわかるくらいの鳴き声です。
鳴いてくれればほぼオス確定なのですが、カエルのオスメスは見分けるのがとても難しいです。信頼ある目を持ったお店で見ていただくのが良いようです。

 

--とりあえず実物を見てみたい!
東京であれば、サンシャン国際水族館、東京スカイツリーのすみだ水族館にいます。その他、全国の水族館・動物園でも展示しているところがあります。
いきなり爬虫類のお店はちょっとハードルが高いでしょうから、水族館・動物園でごらんになることをおすすめします。

 

▼協力:ワイルドスカイ
ヤドクガエルの飼育環境作成、購入、飼育まで、豊かな知識でサポートしてくれます。生きたカエルだけでなく、カエルにちなんだグッズも豊富な、「カエル専門店」です。サンシャイン、すみだ、鳥羽などの水族館等への協力もなさっています。

(文・写真:エドガー/協力:ワイルドスカイ http://www.wildsky.net/