おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

小学生と女子高生の奇妙な関係を描きつつも実は料理漫画の「舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。」 生活の知恵も盛り込んだユニーク作の作者に話を聞いた

 小学5年生の少女がコミュ障で生活力ゼロなお隣の女子高生小説家をお世話する、という料理漫画「舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。」の第1巻が6月26日に竹書房から発売されました。小学生とは思えない母親っぷりをみせる主人公が作る料理は、便利な調理グッズの使い方もあって実生活で応用できそう。作者の秋津貴央さんと編集部にお話をうかがいました。

  •  秋津貴央さんの「舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。」は、田舎に住む料理上手な小学5年生の主人公・五十嵐舞(いがらし まい)が、とある雨の日に自宅の前で行き倒れている金髪のセーラー服美少女、光家環(みつや たまき)と出会うことから始まります。

     とりあえず家にあげ、濡れていた環の服を洗濯する舞ですが、困ったことに環は舞の問いかけに答えてくれず、黙ったまま。環は人見知りのコミュ障だったのです。黙っている口とは裏腹に、空腹であることを大きな音で知らせる環のお腹。仕方なく、舞は環にご飯を作ることに。

     炊き込みご飯をアレンジし、焼きおにぎりにするだけでなく、雨で体が冷えているだろう環を気遣い、温まるよう出汁をかけてお茶漬けにする舞。手慣れた手つきだけでなく、まるで母親のようなバブみを感じさせるところなど、ただの小学生ではありません。

     食べて眠ってしまった環を見ながら、昔飼っていた猫を思い出し「いっそこのまま飼っちゃえたらいのに」なんて、お世話する喜びに浸ってしまう舞ですが、環が隣の空き家に引っ越してきたばかりということを知ってびっくり。すっかり舞になついてしまった女子高生小説家、環との奇妙な隣人関係が始まるのです。

     小学生が料理をして、コミュ障で生活力ゼロな女子高生をお世話する、ということもあり、登場するレシピは本格的なようでいて、実はそれほど難しくないのが特徴。各話の最後にまとめられた作り方を参考にすれば、一人暮らしを始めたばかりの人でも試せるものばかりです。

     そしてこの作品のユニークな点は、随所に覚えておくと便利な豆知識が入っているところ。パスタを茹でる際に吹きこぼれないよう、鍋にスプーンを入れておくなど、実生活に根差した知恵が含まれています。

     中でも、豚の角煮を作る際の下ごしらえで、1枚ずつ取れるポリ袋「アイラップ」が登場した第5話では、連載している漫画配信サイト「WEBコミックガンマぷらす」で公開されると、作中の環と同じように「初めて知った」や、アイラップの公式Twitterアカウントが有名なこともあり「最近Twitterで知った」と、大きな反響を呼びました。

     これについて作者の秋津貴央さんにうかがうと、ご自身では小さな頃から台所に常備されているものだったそうで「大人になってから他県では馴染みがないと聞きビックリして、『この“ビックリ”は漫画にしたら面白そうだし、そもそも調理用具として凄く便利なアイテムだから料理漫画としてもアクセントになる!』と思っていたので、連載すると決まった時から常に頭の隅にありました」と、便利さと認知度のギャップを意識していたんだとか。

     今でも秋津さんは台所にアイラップを常備しているそうで、単行本第1巻の献本が届いたことを知らせる「献本…来た……!!!!」というツイートには、単行本と一緒に私物のアイラップが写り込んでいました。また、第1巻発売を記念して6月19日に公開された番外編「お母さんのメレンゲクッキー」では、アイラップにクッキー生地を入れ、角を切り落として絞り袋の代用にするアイデアも披露されています。

     具体的な商品名を作品に出すこともあり、メーカーの岩谷マテリアル(株)に許可をもらったそうですが、アイラップの公式Twitterも「舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。」に反応。担当編集さんが単行本の裏カバーや書店の特典ペーパーにもアイラップの箱が登場してることをツイートすると、編集さんいわく「10分もたたないうちに反応してくれました」と驚いていました。

     口数が少ないだけに謎の多い環のことも、これから徐々に明らかになってきそうな「舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。」。ストーリーと舞の作る料理、そしてどんな生活の知恵が出てくるかも楽しみな作品です。

    (C)秋津貴央/竹書房

    <記事化協力>
    秋津貴央さん(@aki2kio)/竹書房

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃
    インターネット, おもしろ

    英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

  • そうめん好きも思わず顔面蒼白? 真っ青な「蒼めん」爆誕
    インターネット, おもしろ

    そうめん好きも思わず顔面蒼白? 真っ青な「蒼めん」爆誕

  • 「お蚕様かと思った」 ポテトニョッキで作る“ヤバい絵面のサラダ”
    インターネット, おもしろ

    「お蚕様かと思った」 ポテトニョッキで作る“ヤバい絵面のサラダ”

  • お子さまランチがまさかの押し寿司に 夢いっぱいの見た目にワクワク
    インターネット, おもしろ

    お子さまランチがまさかの押し寿司に 夢いっぱいの見た目にワクワク

  • 生ハムで作った「鯉サラダ」が可愛すぎ 付き合いたてのラブラブ料理に10万いいね
    インターネット, 感動・ほのぼの

    生ハムで作った「鯉サラダ」が可愛すぎ 付き合いたてのラブラブ料理に10万いいね

  • クトゥルフ神話の世界を料理で再現 「料理の魔書ネクロノミコン」8月発売
    商品・物販, 経済

    クトゥルフ神話の世界を料理で再現 「料理の魔書ネクロノミコン」8月発売

  • 大量荷物をランドセルに合体! 夏休みを迎える“小学生あるある”に共感の声
    インターネット, おもしろ

    大量荷物をランドセルに合体! 夏休みを迎える“小学生あるある”に共感の声

  • はんださん作「魂の冷やし中華」
    インターネット, おもしろ

    一見大雑把に見えるも……育児経験者が共感する「魂の冷やし中華」に反響

  • 独学で仕上げた“異世界姿造り” 8匹のサメが大集合
    インターネット, びっくり・驚き

    独学で仕上げた“異世界姿造り” 8匹のサメが大集合

  • どうしてこうなった……クマのパウンドケーキがまさかの力士級に
    インターネット, おもしろ

    どうしてこうなった……クマのパウンドケーキがまさかの力士級に

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • YouTube、永久停止クリエイターに「再出発の機会」 新チャンネル申請を可能にする試験導入を発表
    インターネット, サービス・テクノロジー

    YouTube、永久停止クリエイターに「再出発の機会」 新チャンネル申請を可能に…

  • 南インド伝統のチキンカレー「ケララチキンカレー」
    商品・物販, 経済

    松のやが南インド伝統の味を再現 「ケララチキンカレー」新発売

  • 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)
    商品・物販, 経済

    ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」…

  • キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化
    商品・物販, 経済

    キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

  • 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言
    社会, 経済

    時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

  • ゴロっとチキンのカレーナポ
    商品・物販, 経済

    パンチョ初の人気投票1位「カレーナポ」が進化 期間限定で復刻登場

  • トピックス

    1. 藝大卒の声楽家が1時間1000円で自分を貸し出す理由 フリー芸術家ならではの戦略

      藝大卒の声楽家が1時間1000円で自分を貸し出す理由 フリー芸術家ならではの戦略

      プロの声楽家として活動する傍ら、1時間1000円から自分の時間を「レンタル」している男性。キャリア豊…
    2. ドムドムが“カニまるごと”の衝撃バーガーを再販 新作コチュジャン味を食べてみた

      ドムドムが“カニまるごと”の衝撃バーガーを再販 新作コチュジャン味を食べてみた

      ドムドムハンバーガーは10月14日に、カニを丸ごと挟んだ「丸ごと!!カニバーガー」を販売開始しました…
    3. 丸山製麺が「ラーメン大好き小泉さん」とコラボ!小麦麺使用の新感覚「らーめん缶」を実食

      丸山製麺が「ラーメン大好き小泉さん」とコラボ!小麦麺使用の新感覚「らーめん缶」を実食

      丸山製麺が10月6日から、人気ラーメン漫画「ラーメン大好き小泉さん」とコラボした「らーめん缶」を、東…

    編集部おすすめ

    1. 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)

      ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」を発売

      マクセルイズミ株式会社は、ストッキングやタイツなどの繊細な衣類にも対応する毛玉取り器の新モデル、「毛玉とるとる Pro(KC-NW825)」…
    2. キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンが、バンダイの「ガシャポン」とコラボレーション。歴代のカメラとレンズをミニチュア化した「Canon ミニチュアカメラコレクション」を…
    3. 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信社は10月9日、自民党本部での取材中に「支持率下げてやる」などと発言した本社映像センター写真部の男性カメラマンを厳重注意したと発表し…
    4. 「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      言わずと知れた人気コンテンツ「ちいかわ」。かわいくもハードなあの作品世界に入っていきたいと願う人は多いはず。筆者もその1人です。しかし二頭身…
    5. ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      キーボードに差し込まれたトランプのジョーカーと、その裏に書かれた「げぇむすたあと」の文字。Xユーザーの「たーけ」さんが、たまたま入ったネット…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト