昭和の古き良きデザインや歌などが令和の今、ブームになっています。若い世代にとって、ロマンや郷愁を感じるようです。そしてブームが起きている昭和時代は、ちょうど祖父母が若かった時代と重なります。世代を超えて愛される昭和レトロを、話の種にしてみませんか?

■ 3世代で楽しむ想い出語り

 回想法という言葉、皆さんの中には聞いたことがある人もいるかと思います。回想法とは、高齢者に若いころの出来事や生活、娯楽などを視覚的や聴覚・触覚的に感じてもらうことで自身の歴史を思い出し、回顧して語ってもらうというもの。苦楽を共にした物事や歌などとともに、若いころの良き思い出などを語ってもらうことが心の癒やしにつながります。

 年末年始の帰省で、祖父母がいる田舎へ行く人も少なくないかもしれません。親世代とともに昭和の歌や、流行ったもの、生活の中でかつて使われていたものを実際に見聞きすることは、レトロなものが好きな若者にとっても、認知症を予防したい祖父母にとっても、子ども時代が懐かしい親世代にとっても楽しいかもしれません。

■ 実際にはどんなものがいいの?

 スマホなどでアクセスできる音楽提供サービスで祖父母が好きな音楽を流すのが一番手っ取り早いでしょう。好きだった歌手を聞いて、その歌手の曲を流すとより喜ばれるでしょう。さらに、若者にとっても新たな発見になりそうです。

 また、昔ながらのお店や博物館などにも、昭和の歴史を感じさせるものが多く遺されています。レコードやホーロー看板、洗濯板や脱水ローラー付き洗濯機、黒電話などなど……。実際に使っていたものの話を聞きながら、当時の様子に思いをはせるのも想い出を共有することに繋がり、若い世代には新鮮に感じることでしょう。そして高齢世代にも当時を回想することで、気持ちが明るくなったり懐かしい気持ちに浸ることができたりしそうです。

■ 筆者が実践した回想法

 筆者は正看護師として老人施設で長い間勤務していました。その施設には昭和の生活を切り取ったような写真が数多く置いてありました。また、昭和歌謡集のCDもあり、戦前から昭和の終わりまでのヒットソングをよく流してもいました。

 昭和一桁年代の人達には、戦中の頃から戦後直後の記憶が一番強く残っているようでした。プロペラ飛行機の写真を見た人は「これが飛んできた時は焼夷弾も降ってくるから、警報が鳴る前に防空壕に駆け込んだ」といった思い出話を語っていました。

 昭和10年代の皆さんには、戦後すぐから高度成長期時代の頃に流行ったのもが話のネタによく上がっていました。テレビが初めて一般家庭に入り始めたこと、昔の洗濯機には洗濯物を絞るローラーが付いていたことなど、時代の移り変わりとなる印象的なものが多くあり、話題が尽きませんでした。

 戦後すぐの歌謡曲は、筆者が担当していた年代にとってとても思い出深いものであったようで、タイトルは忘れていても曲は覚えていて一緒に口ずさみ、利用者同士の思い出話にも花が咲いていました。同じ苦労を共にした年代同志、忘れがたい思い出を共有しているように感じられました。

 このような話を繰り返し聞く・話すことは、記憶の奥にある感情をも掘り起こして高齢者の感情を豊かにします。帰省や面会の折に昔の記憶の扉を開いていくことは、高齢者の心の健康に繋がっていきます。

 帰省の折に、昔のものが写っている写真を持って話題の種にしてみてみてはいかがでしょう?

(正看護師・梓川みいな)