目は、一度に多くの情報を一気に取得する事ができる器官です。もし、その目が何らかの理由で使えなくなったら……。みなさんはそんな、「見えない世界」を想像できますか? 視覚に異常がなくても目を使う事ができない、「眼球使用困難症」について描かれた漫画がSNS上で大きな話題になっています。
「眼球使用困難症を知ってください。せめて障害だと国に認めてほしいです。外出困難な患者でも、障害者手帳すら交付されません。まずは、認知が必要です。私たちのほとんどは、声を上げることが出来ません」と、自身の症状を漫画にしてツイッターに投稿したのは、元タレントで眼球使用困難症当事者のマリーナさん。
漫画の中で、自分の意思とは関係なくまぶたが閉じてしまい、歩いている時にもかかわらず目が閉じた状態になって困っている状況や、少しの光でも非常に眩しく感じられ、目を開けている事すら困難な状態が描かれています。
目を開けていたいのに、開かなくて困っている。勝手に閉じていくまぶたにどうしようもできず、「眠いの?」と誤解される事も多い。本当は目を使う事ができれば見えるのに、ままならない。眼球が何らかの理由で使えない状態に陥ってしまう事を総称して、「眼球使用困難症」と呼びます。視力的には問題がないけど、眼球を使う筋肉や神経に異常があるために、実質的に目が見えない状態と同じ。しかし、視覚障がい者と認められないために身体障がい者認定がされず、障害者手帳も交付されないため、治療を受けるにも高額になる事があります。
マリーナさんは、専門の眼科で、まぶたの筋肉を緩めるために目の周りの神経に注射を打ってもらい、まぶたが勝手に動かなくなる症状を緩和してもらっています。しかしこれは対症療法に過ぎず、注射の効果が切れたらまた打ってもらう、の繰り返しとなってしまいます。
こうした症状を持っている人は、広く周知活動に向ける余力が少ない人も多く、実際に知られていなくても同じような症状に悩まされている人もいます。そのため、マリーナさんは、「まずは、目に問題がない人たちの周知が欲しいです。宜しくお願いいたします。」と漫画で呼び掛けています。
マリーナさんのこのツイートは4万回以上リツイートされ、知らなかった、周知を広げたいという反応と共に、自分も同じような症状に悩んでいるけど眼球使用困難症である事自体知らなかった、という声もあちこちから出ています。
マリーナさんの場合は、精神安定剤などの薬の副作用による眼瞼けいれんも関連しているようですが、眼球使用困難症は眼瞼けいれん(局所ジストニア)以外にも、眼瞼下垂、極度のドライアイや眼精疲労、感覚過敏による羞明(明るさを極度に感じ、健常者が丁度良い明るさでも眩しくて目を開けられない)、視神経炎や甲状腺眼症などによる眼球運動の異常、 頭頸部外傷後遺症、各種脳症の後遺症など、直接視力に関係していなくても「目が見えない状態」に陥ってしまい、視覚障がい者と同じように視力を奪われてしまう状態を総称しています。
こうした視力を奪われた状況においても、NPO法人「目と心の健康相談室」や、「みんなで勝ち取る眼球困難フロンティアの会」など、専門医や当事者たちが立ち上がり、眼球使用困難症についての周知活動がいま始まっています。まだ専門医も少なく、該当する人はいても診断に至っていない人も多いかもしれません。まずは、知る事から。目を開けたくても開けられない症状があるという事を、どうか知ってください。
https://twitter.com/marinakoganei/status/1074791607604436992
<記事化協力>
マリーナ(発達障害者・眼球使用困難症)さん(@marinakoganei)
(梓川みいな/正看護師)