NTTを装った自動音声による詐欺電話の被害が増えています。今回、おたくま経済新聞の読者から、まさに被害者になりかけた実体験が寄せられました。

 体験者の方は、「うっかり出てしまったため、ひっかかりそうになりました」と語っており、誰にでも起こり得る手口の巧妙さが浮き彫りになっています。

■ 「電話が止まります」突然の自動音声に動揺

 体験者によると、固定電話にかかってきたのは「NTT料金未払いのため、電話が止まります。オペレーターと話したい方は9を押してください」という内容の自動音声でした。

 何気なく9を押すと、NTTを名乗る人物が電話口に出てきて、「あなたの固定電話の番号で、携帯電話が大阪で新規契約されている」「その契約で2か月分、計19万円の料金が滞納している」と言われたそうです。

 そこで全く身に覚えがないことを伝えると、「同様の被害が多発しているため、このまま大阪府警に繋ぎます」と提案してきたとのこと。

 その際、「被害届の受理番号」という言葉が相手の口から出たことで、詐欺の話をどこかで聞いた記憶がよみがえり、体験者は「確認のためかけ直したいので電話番号を教えてください」と返しました。すると、相手は即座に電話を切断。幸いにも、被害は未然に防がれました。

■ 「騙されない」と思っていても、心の隙を突いてくる

 体験者は、日ごろから詐欺の情報を耳にしていたそうです。しかし、突然の電話と冷静さを奪うような強い言葉に不安をあおられ、思わず指示に従ってしまったとのこと。「本当に急に不安をあおる言葉で不意を突き、ひっかかりそうになるものなのだな」と振り返っていました。

 今回の件では、電話に出てしまったことがきっかけとなり、相手と直接会話する状況に陥ってしまいました。結果的に被害には至らなかったものの、体験者は自分の電話番号が相手に知られているという事実に大きな不安を感じているそうです。念のため、最寄りの警察署に相談したとのことでした。

■ 警察庁も注意呼びかけ 「自動音声型の詐欺」に要注意

 このような事例に対しては、国民生活センターや警察庁、そして名前を使われているNTTファイナンス自らも常時注意を呼びかけています。

 警察庁や国民生活センターでは公式サイトで自動音声型の詐欺について事例を公開。同様の被害が全国的に確認されているとしています。

警察庁が公開しているポスター

 NTTファイナンスは、今回のように自動音声を使って利用者を誘導する詐欺が発生しているとして、特設サイトを開設して積極的に情報を発信。

 「NTTファイナンスでは、自動音声ガイダンスを用いて、契約状況に関する事項や、回線の利用停止を通知することは行っておりません」と呼びかけられており、体験談にみられるような「NTTの名をかたった音声案内」「身に覚えのない携帯電話契約」「警察への転送」「被害届の受理番号」というキーワードは、まさに注意すべきポイントです。

■ 怪しいと思ったらまず冷静に そして相談を

 今回の体験は、「冷静でいれば防げたかもしれない」と考える人もいるかもしれませんが、実際に電話を受けた当事者にとっては、その冷静さを奪われるような強い不安と焦りを生む仕掛けが施されています。実在する企業名や警察という存在を盾にして、相手の判断力を鈍らせようとする手口は、非常に悪質で巧妙です。

 もし、今回と似たような電話を受けた場合には、慌てずに電話を切り、NTTの公式サイトなどから正規の問い合わせ先を調べて、あらためて自分で確認をとることが大切です。

 そして既に、「電話に出て被害が発生してしまった」、「騙されたかもしれない」という場合には、すぐに最寄りの警察や警察の電話相談窓口(#9110)、消費生活センター(188/いやや)へと相談してください。

<参考>
警察庁「架空料金請求詐欺
NTTファイナンス「NTTファイナンスを名乗る架空料金請求詐欺にご注意ください!
国民生活センター「自動音声の電話で未納料金を請求する詐欺に注意

(宮崎美和子)