「うちの本棚」、今回ご紹介するのは倉多江美の『宇宙を作るオトコ』です。ファンタジーとも言えるしSF…とも? 独特の世界観に浸ってみてください。
長編作品の少ない倉多江美の2作目の長編。確か初出時にはSF作品という扱いだったような気がする。
まあ、広義でのSFといえなくもないのだが、SFのイメージからははずれるものであって、連載当時には面白く読めなかった。単行本も刊行されてすぐに買ったものの、連載時の印象もあって、ろくに読まないまま本棚に並んでいたのだが、今回改めて読んでみて、すごく面白く読めたのが驚きだった。
日溜まり町に住む文殊の兄、日和は妙な研究をしている変わり者。弟の飼っている雌鳥を雄鳥にしてみたり、カバとオオカミの雑種を作ってみたり…。そんなとき、森にある沼で採取してきたバクテリアが事故で溶液に混ざったことから不思議が現象が起こり始める。そしてそれは空間と時間を混乱させていくのだが…。
ユーモアと幻想性に富んだ倉多江美ならではの作品、と言ってしまえばそれまでだが、ちょっとほかでは味わえない面白さがこの作品にもある。
まあ、最終的に何も解決していないし、あるいは構想の途中で終了せざるを得なかったのかもしれない(前述したように連載時にはあまりパッとした印象がなかったので)。もしそうなら、この先どのような展開を見せたのかちょっと気になるところではある。
初出:朝日ソノラマ「マンガ少年」昭和54年6月号~12月号
書 名/宇宙を作るオトコ
著者名/倉多江美
出版元/朝日ソノラマ
判 型/新書判
定 価/350円
シリーズ名/サンコミックス
初版発行日/昭和55年1月25日
収録作品/宇宙を作るオトコ
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)