おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【特撮映像館】Act.9 「昭和ガメラシリーズ」

update:

ナナメ観!特撮映像館「ナナメ観!特撮映像館」第九回目となる今回は、第一作『大怪獣ガメラ』から『ガメラ対深海怪獣ジグラ』そして『宇宙怪獣ガメラ』までの「昭和ガメラシリーズ」について考える。
個人的なことだが、「ゴジラ」より「ガメラ」が好きだった。どこが、と考えると明確な理由をあげるのは難しいのだが、「子供の味方」という親近感がひとつにはあったのだという気もする。

  • また、住んでいた地域の関係で「ゴジラ」より確実に「ガメラ」の封切りが地元の映画館であったということも言えるだろう。最初に映画館で観た怪獣映画は『ガメラ対ギャオス』だったはずである。また初めて子供たちだけで映画館に行ったのは『ガメラ対ジャイガー』だったと思う。「ガメラ」に関してはギャオス以降は確実に映画館で観ていたのに対し、「ゴジラ」は主にテレビ放送された作品を観ていて、劇場で観た「昭和ゴジラシリーズ」は『オール怪獣大進撃』『ゴジラ対ガイガン』の2本くらいなのである。
     
    以下、気になったことについてまとめてみる。

    ▼予告編
    当時の劇場映画で普通のことだったのか、大映作品の特徴なのかはわからないが、予告編のために撮影されたシーンがある。ほとんどは本編と同じシチュエーションでセリフが違っている程度のものだが、第1作に関しては、もともと本編には存在しないシーンまで撮り下ろされている。単に本編のハイライトシーンをつないだだけの予告編とは違う、予告編としての楽しみが「昭和ガメラシリーズ」にはあるのだ。

    ▼怪獣造形
    「昭和ガメラシリーズ」最大の特徴といってもいいのが、登場する怪獣のデザイン・造形だろう。「ゴジラ」に登場する怪獣たちが実在する動物や昆虫が巨大化したものを基本としているならば、「ガメラ」に登場する怪獣たちは、まったく自由な発想から具体化されたものである。その最たるものが出刃包丁みたいなギロンかもしれない。主役であるガメラが巨大亀というオーソドックスな造形なのに対して、適役の怪獣たちのユニークさはシリーズの魅力のひとつでもある。

    ▼キャスト
    「昭和ガメラシリーズ」といえば、『~バルゴン』『~ギャオス』で主演した本郷功次郎の印象が強いが、シリーズを通して観ていると、『~バルゴン』で小野寺を演じた藤山浩一、本郷の兄を演じた夏木 章のふたりが、毎回なんらかの役で顔を出していて、まさにレギュラー俳優という状態なのに気がつく。また防衛隊の隊長や副官を同じ俳優が演じていたり、『~ギャオス』で登場する新聞記者も何作かで顔を見せている。「ゴジラ」同様第1作から同じ世界観で作られたシリーズなので、同じ俳優が同じ役どころで出演してもよさそうなものだが、そうしないのは当時の映画制作の約束事だったのかもしれない。そんな中でシリーズを通して同じ役柄で出演しているのがアナウンサー役の男性。第1作からずっとアナウンサーとして登場していて、シリーズ後半になるとこの人が出てくるとなんとなくホッとしてしまうほどだ。

    女優に注目してみると『~ギャオス』に出演した笠原玲子が、『~ギロン』『~ジグラ』と3作に出演しているのだが、「ゴジラ」と違いそれほど女優が活躍したという印象は残らない。「ゴジラ」の水野久美や星 由里子のような存在が「ガメラ」にもあれば評価も変わっていたような気がしてしまう。

    ▼音楽
    「昭和ガメラシリーズ」には、「ゴジラ」に比べて印象的な音楽がない、と言われている。が、主題歌『ガメラマーチ』は『~バイラス』以降で使われていて、印象に残っている人も多いだろう。ソノシートなどにも収録されていたので、同じ音源が使い回されていたという気がしていたが、今回シリーズを通して鑑賞していたところ、各作品ごとに微妙に歌っている子供たち(大映合唱団という名称になっている)の声や歌い方が違っている。実は毎回録音し直されていたのかもしれない。

    ▼セリフ
    『~バルゴン』で、博士役の北原が「バルゴンの断末魔だ」というセリフがある。また『~ギャオス』でも同様に博士役の北原による「ギャオスの断末魔だ」というセリフがある。この「断末魔」という言葉が妙に印象に残って、ほぼ全作で使われていたような気がしていたのだが、この2作に限ったことだった。それにしても怪獣の最後を妙に納得させてしまうセリフではないか。

    「昭和ガメラシリーズ」は大映の倒産によって『~ジグラ』で終了したわけだが、当時次回作として『ガメラ対双頭怪獣W』という作品の公開予定が公示されていた。また「昭和ガメラシリーズ」がLD-BOX化された際には企画が上がっていた『ガメラ対ガラシャープ』をイラストと模型で映像化。同時に敵怪獣としてアイデアが出されていた「マルコブカッパ」も模型が作られ、映像が残されている。

    今回はDVD「ガメラ Z計画 DVD-BOX」版で鑑賞した。特典ディスクには監督の湯浅氏のほか、当時のスタッフの貴重なエピソードが聞けるインタビュー番組やスタッフ座談会なども収録されていた。

    あわせて読みたい関連記事
  • 「美味しい」じゃない、“非日常の食べ物”をめぐる5冊
    ライフ, 雑学

    「美味しい」じゃない、“非日常の食べ物”をめぐる5冊

  • 例のあの和菓子、都道府県別の呼び方
    社会, 雑学

    全国で呼び名はどう違う?「今川焼」が19エリア制覇 ニチレイが“勢力図”を公開

  • 白菜の黒い斑点はポリフェノールだった 農林水産省が「捨てないで」と呼びかけ
    ライフ, 雑学

    白菜の黒い斑点はポリフェノールだった 農林水産省が「捨てないで」と呼びかけ

  • 三重県御浜町ではなぜ大量の100円玉が必要?公式Xが出題したクイズに注目
    ライフ, 雑学

    三重県御浜町ではなぜ大量の100円玉が必要?公式Xが出題したクイズに注目

  • 実は永遠じゃない エレコムがモバイルバッテリーの寿命に注意喚起「目安はおよそ2年」
    ライフ, 雑学

    実は永遠じゃない エレコムがモバイルバッテリーの寿命に注意喚起「目安はおよそ2年…

  • 缶コーヒーの「#マーク」に隠された意味 コカ・コーラ社に聞いた“色が変わる理由”
    ライフ, 雑学

    缶コーヒーの「#マーク」に隠された意味 コカ・コーラ社に聞いた“色が変わる理由”…

  • 「読書の秋」に読んでほしい!本好きライターオススメの小説&ノンフィクション5冊
    ライフ, 雑学

    「読書の秋」に読んでほしい!本好きライターオススメの小説&ノンフィクション5冊

  • 給油口の位置が運転席から分かるって知ってた? 意外と知らないドライバーのための豆知識
    ライフ, 雑学

    車に潜む「モイランの矢」って知ってる? 給油口の位置を示す小さな矢印

  • 学生時代の“謎文化”が続々集結!「○○してたら恋人募集中」アンケート結果まとめ
    ライフ, 雑学

    学生時代の“謎文化”が続々集結!「○○してたら恋人募集中」アンケート結果まとめ

  • “視える世界”を歩く 霊能者監修「視える人には見える展 -零-」体験レポ
    オカルト・ミステリー, 雑学

    “視える世界”を歩く 霊能者監修「視える人には見える展 -零-」体験レポ

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 「LINEグループ作成」を要求する詐欺メールに注意 海外のサイバー監視が日本向け攻撃を警告

      「LINEグループ作成」を要求する詐欺メールに注意 海外のサイバー監視が日本向け攻撃を警告

      海外のサイバー脅威情報を発信する「Hackmanac」が12月19日、日本国内の複数の組織を標的とし…
    2. 電話対応の様子(NORAD Tracks Santa Newsroom)

      NORAD、サンタ追跡作戦に万全の体制 即時追跡方針を強調

      米国防総省は、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)による重要ミッション「サンタ追跡作戦」を、2025…
    3. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…

    編集部おすすめ

    1. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    2. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    3. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    4. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    5. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト